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加圧トレーニングへの対抗

カナダのように国や州の予算による縛りしかない国では、赤字財政であっても政治家としては医療サービスの削減に賛成する姿勢をとりにくいので、日本と比べれば医療費は高騰している。
日本においても、保障予防事業等については各保険者の裁最に任されているので、検診等の内容を充実させる肝力が加わり、広範な検診が実施されている理由の一つとなっている(第三章参照)。
以上のように、日本の医療制度は国による強力な統制下にあり、国民にも医療機関にも制度の選択ができる余地は少ない。
こうした状態にあるにもかかわらず、なぜ国民のほうから、あるいは医療機関のほうから、「統制反対」という声があまりあがらないのであろうか。
また、社会環境が経済的にも技術的にも激変する中で、制度の維持がどのようにして可能となっているのであろうか。
制度の維持を可能にしている条件として以下が考えられる。
まず、第一は国民の側にも医療機関の側にも、肝心なところではかなりの選択幅がある。
つまり、国民は医療機関を自由に選ぶことができ、一方、医療機関は患者にそっぽを向かれたら、少なくとも私的部門であれば経営的に成り立たなくなる。
こうした観点からいえば、曲がりなりにも競争原理が働いている。
他方、医療機関は確かに診療報酬体系等によって強く規制されているが、基本的には出来高払いが維持されているため、診療の自由と経営の独立採算性が一応は守られている。
第二に、必ずしもすべての面において制度は硬直的でない。
たとえば、裕福な患者は医師に謝礼を渡すことによって、少なくとも自分としてはより良い医療を受けたという満足感があり、逆に高名な医師には副収入が約束されている。
また、老人病院は一般に「お世話料」を徴収しているが、それを行政当局も見逃しており、生活部分が大きい高齢者ケアに対する財源の不足をカバーしている。
第三に、医療保険制度は基本的には平等にできているが、完全には平等でない。
相対的に所得が高く、健康である人々は確かに医療サービスをあまり使わないわりには高い保険料を払い、税金も多く納めている。
だが、共済組合や組合健保に加入していれば、保険料率としては相対的に低く、また保健予防面等でさまざまな付加的サービスがあり、さらに医療機関の窓口での自己負担割合も低い。
その結果、これらの保険の加入者は優遇されているという認識を自他ともに持っており、それが不満を少なくしている。
第四に、主に歴史的な経緯によるが医療提供者の中で政治的に最も大きな力があるのは開業医であり、開業医がまた現行制度の中で経済的には最も有利な立場にある。
そして医療費抑制の点から幸いなのは、開業医が提供する医療のほうが大病院が提供するハイテク医療と比べて格段にコストがかからないことである。
一方、大病院に働く勤務医には専門医としての興味のある仕事をすることができている。
第五に、制度を維持するために、確かに過去の実績が重視されており、各医療提供者に配分される相対的な割合が変わらないように配慮されてきた。
だが、一方においては弾力性も兼ね備えており、診療報酬の改定のたびに政策目標や問題点に対応して調整が繰り返されてきた。
また、保険制度の面においても、各保険者に対する助成金や老人保健法による拠出金の割合について、その時々の状況を踏まえて調整が重ねられてきた。
なお、こうした調整がスムーズにできた理由の一つとして、交渉に臨む各当事者の構成が変化しなかったことも理由としてあげる必要がある。
以上の五点を貫いている基本的な考えはバランスであるといえよう。
バランスとは、国民各層間、医療提供者間、およびその両者の問の「和」をできるだけ維持し、表立った対立を回避することである。
そして、バランスを乱せば和がなくなり、危険な状態になるという現状維持的な発想が根底にある。
しかしながら、社会環境は絶えず変化しており、財政負担の増加をできるだけ抑制するなかで、医療の質的向上を図る、という新たな国民的課題に応えるためには、これまでの政策を見直す必要がある。
日本の医療制度の長所である低い医療費と平等な体制の骨格を今後とも維持することが必要である。
そのためにも、公的大病院を中心とした専門医療、高齢者のケア、開業医の活性化、という三つの分野において新たな政策が必要である。
前の二つの分野は、画一的な診療報酬体系の適用と医療費抑制による財源の不足に由来するひずみが最も麒著であり、早急な対応が求められている。
公的大病院を中心とした専門医療の改革医師も患者も最新の医療を求めているが、診療報酬体系による経済的な制約があるために、このような要求に応えられるだけの施設設備と人員を備えることができる病院は補助金等の恩典がある公的病院や大学病院に限られる傾向にあった。
その結果、これらの病院がハイテクの専門医療を担い、他の医療機関がそれ以外を担うという形で暗黙のうちに機能分担が行われてきた。
ところが、最新の医療を求める傾向が強まっている中で、医療費抑制の政策が強化されたために、これらの病院にますます患者が集中してきた。
その結果、日常の一般的な病気を持っているような患者も、専門医療を提供している病院で受診するようになっている。
一方、病院の側も専門医療だけ行っていては補助金があっても赤字はますます拡大するので、このような患者が訪れることを歓迎してきた面もある。
こうした問題に対応するためには、同一のサービスに対しては同一の料金とする診療報酬の原則に例外を設け、公的大病院を中心に専門医療を提供する病院については、まったく別の方法を導入する必要がある。
そもそも開業医と大病院とを同じ方法で支払っている国は日本以外に存在しない。
そこで筆者が提唱しているのは、各病院ごとに入院については一日当り、外来については一回当りの料金をそれぞれ決め、その料金を各病院のパフォーマンスに従って改定してゆくことである。
専門医療を提供する医療機関は公的大病院以外にも、大学病院のほか、がんセンターや脳卒中センター、および耳鼻科や眼科の専門病院のように一つの分野だけに特化した医療観閲もあり、その中には中規模であったり、民間の病院も含まれる。
大学病院については医学教育の改革を待たねばならないが、それ以外の専門機能を有する病院については新しい方式に移行することが望ましい。
具体的には各病院が従来の診療報酬体系のもとで得ていた患者一人一口当りの入院収入、一回当りの外来収入をべースに包括料金を設定し、それをあらかじめ決めたパフォーマンス目標の達成度に従って改定してゆく。
目標値としては、平均在院日数、病床利用率等の生産性の指標、高度手術や三次救急など高度医療提供の指標、紹介患者の割合などを示す地域の医療機関との連携状況を示す指標、プロフェッションとしての質の確保をみる指標、および患者や地域の医師の病院に対する満足度などが想定される。
補助金については、当初は過去の実績に基づいて包括料金に基づいた収入に付加されるが、あらかじめ設定された補助金としての目標値に沿って順次減額し、最終的には狭義の政策医療分野である伝染病医療、僻地支援医療等に限って個別的に出す必要がある。
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